日本医科大学付属病院

形成外科・再建外科・美容外科

〒113-0022 東京都文京区千駄木1-1-5
TEL 03-3822-2131
FAX 03-5685-3076

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ケロイド外来

ケロイド外来

【ケロイド外来について】
 ケロイド外来では、赤く盛り上がる「きずあと」である、ケロイドや肥厚性瘢痕を診察・治療しています。ケロイドや肥厚性瘢痕は、赤く盛り上がって痒みや痛みを伴う、たいへん不愉快なものです。特に顔をはじめとして目立つ場所にできた場合など、その苦しみや不安は本人にしかわからないものです。日本医大のケロイド外来はそのような患者様の苦しみを少しでも減らすことを目的としてつくられました。ケロイドの治療は、患者様の体質、年齢、またケロイドのできた場所によって最適な治療法が異なるため、専門の知識が必要です。この外来では、患者様個人個人にあった最適な治療法を提案させていただいております。ケロイドの患者様はもちろん、ケロイドかどうか分からない方、またケロイドの予防にご興味のある方(ケロイド体質であることがわかっている上で、手術を受ける予定がある方)など、少しでも心配なことがありましたら、どなたでもお気軽に御相談ください。


【ケロイドとは?】
 患者様がケロイドだと思っても、実は専門的には熱傷潰瘍・ケロイド・肥厚性瘢痕・成熟瘢痕・瘢痕拘縮といったものの可能性があり、それぞれ治療法が異なります。もちろん外来にお越しいただければ、それらの診断をつけることができると思います。中でもケロイドは体質によるものが多く、ご家族で同じような症状の方がいらっしゃる場合も少なくありません。ケロイドは特に意識しないような小さなきず、たとえばにきびとかちょっとした毛嚢炎などからもでき、まるで何もない場所に突然できたようにも思えるものです。胸や肩、腕(BCGの注射跡)、お腹(特に帝王切開をされた方の下腹部)などによくできます。また、ピアスをあけた耳におおきなしこりができることもあります。

 

 

耳のケロイド・・・ ピアスをあけた後に、感染をおこしたり、なかなか傷が治りにくかったりすると、このような腫瘤になる可能性が高まります。できるだけ耳の形が変わらないように切除して、電子線を照射し、術後長期間テーピングを行います。そして寝るときに手術した方の耳を下にしないように気をつければ、10人中8人は良くなります。
下腹部のケロイド・・・帝王切開や腹部の手術後に、1本の線だった傷跡が横に広がっていき、赤く大きく盛り上がることがあります。このようなケロイドも、手術と放射線治療、またレーザー治療、サージカルテープやシリコーンテープ固定で治療可能です。
腕のケロイド・・・腕もケロイドや肥厚性瘢痕ができやすい場所です。腕は傷口に絶えず力がかかるので、ちょっとしたニキビや注射跡からケロイドができることがあります。腕は手術後に安静を保ちにくいのでなかなか難しいですが、極端な運動を控えていただければ、10人中7人は1本の線状の傷跡にすることができます。ケロイドが関節にまたがる場合は、ジグザグに切開するZ形成術などを利用して長い瘢痕を分断して短い複数の瘢痕にする方法も有効です。


【ケロイドの治療】
  ケロイドは、できた部位や、いろいろな状態によって、最適な治療法が異なります。以下に代表的な治療法を記載します。

1. 手術しない方法
1) 飲み薬
 飲み薬ではトラニラスト(リザベンR)が有効であるとされています。これは抗アレルギー剤であり、ケロイドや肥厚性瘢痕の組織中にある各種炎症細胞が出す化学伝達物質を抑制することにより、痒みをはじめとする自覚症状を抑え、さらには病変自体を沈静化させると考えられているものです。また、柴苓湯(さいれいとう)という漢方薬が効くという報告もあります。

2) 塗り薬
  塗り薬として効果のあるものにはいくつかあります。炎症を抑える目的での、デルモベートRやアンテベートR、リンデロンRをはじめとするステロイド軟膏・クリームや、非ステロイド系抗炎症剤、ヘパリン類似物質(ヒルドイドソフト軟膏R)、ワセリンなどの保湿剤があります。その他、当科では痒みに対してヨモギローションを使用しております。

3) 圧迫固定具
 昔から、やけどのきずあとは、サポーターや包帯などで固定することが効果的とされてきました。ケロイドや肥厚性瘢痕は、絶えず力がかかる部位にできる傾向が強いので、きずを安静に保つ意味で重要です。


4) 貼り薬
 最も多く利用されているものには、抗炎症剤であるステロイドがついているテープ(ドレニゾンテープR)と、シリコーンジェルでできたシート(Fシート R、シカケアR、原沢R、メピフォームR、クリニセルRなど)、またポリエチレンジェルシート(傷あとケアシートR)があります。ジェルシートは長期間貼っておくことで、保湿や創の安静・固定の意味があります。ジェルシート自体に粘着力があるため、傷跡やケロイドにぴったりくっつき、洗うことによって繰り返し使うことができます。

5) 注射
  ステロイド(ケナコルトRなど)を注射することがあります。赤みや盛り上がりは著明に減少しますが、効果が強すぎるとかえって凹んだ瘢痕になることがあります。塗り薬と同じく、ステロイドであるため、毛細血管の拡張を呈することもあり、周囲の皮膚の菲薄化が生じることもあるのが欠点です。また硬い瘢痕の中に注射するため、痛みがあり、女性ではステロイドの影響で生理不順が生じることもあるため注意が必要です。ただし、当科では極力痛みが少ないように、麻酔のテープを併用したり、麻酔の注射を組み合わせたり、また細い針を使う、注射する場所や方向を常に考えながら、工夫しています。アトピ―性皮膚炎の治療でも良く議論になりますが、ステロイドと聞くと拒否反応を起こされる患者様がおられますが、適切な使い方をすることによって確実な効果が得られることがあります。ケロイドの場合は場所や大きさ、その他いろいろな条件によって、使った方が良い場合と使わない方が良い場合があります。われわれは、ステロイドの治療は数多い治療法の一つとして位置づけていますので、患者様とよくご相談させていただいてから、必要なときのみに使用いたします。

6) レーザー
 ケロイドや肥厚性瘢痕の治療に、レーザーを使うことがあります。ケロイドや肥厚性瘢痕の中の血管を破壊したり、コラーゲンの分解を促進させることを目的としたものが主流ですが、その効果はまだはっきりしておらず、各病院で試行錯誤がくりかえされています。当院のケロイド外来では、色素レーザーや Nd:YAGレーザーなどいくつかの種類のレーザーを設置しておりますので、部分的に試して、効果がある場合には継続してレーザーを照射することができます。

7) その他
 そのほか液体窒素を使った治療法など、種々の治療法が報告されてきましたが、単独で効果のあるものは少なのが現状です。日本医大のケロイド外来担当医はケロイドに対する新しい治療法の開発のため、ケロイドに関連する遺伝子やタンパク質、また代謝物質などをターゲットに、診療と共に昼夜を問わず日々研究を行っております。

2. 手術する方法
1) 手術に対する考え方
  ケロイドは、いままで解説してきた方法だけで軽快するようであれば、手術をしなくても良いのですが、しかし、ひきつれ(瘢痕拘縮)の原因になったり、目立つ所で醜状が問題となれば、やはり手術をすべきです。しかし、従来からこれらは安易に手術してはならないとされてきました。なぜならば、楕円形に切り取ってそれを縫い縮めると、少し長めの直線のきずとなりますが、もしそこからケロイドや肥厚性瘢痕が再発したら、前より大きなものになってしまうからです。今でもそのような考えの医師は多いのですが、形成外科では、できる限り再発しないような縫い方の工夫をし、さらに放射線治療の一種である、電子線治療や小線源治療という方法を取り入れることによって、これらの問題を解決してきました。放射線治療は、放射線科を受診していただいて、行います。われわれの電子線 照射に関する治療は、2005年に読売新聞、2008年に産経新聞に掲載されました。
1. 読売新聞
http://www.nms-prs.com/docs/Yomiuri20050926.pdf
2. 産経新聞
http://www.nms-prs.com/docs/Sankei.pdf

術前 術後



 完全に傷跡をなくすことは不可能ですが、様々な治療を組み合わせることによって、極力目立たなくすることは可能です。ケロイドは大きくなればなるほど治療が難しくなります。日本医大のケロイド外来では小さいうちに切除して放射線を照射する、という選択肢がありますので、どんどん大きくなる前に手を打つことができる可能性があります。もちろん手術よりも他の方法が良い場合もたくさんありますので、外来にて拝見して、よく患者様とご相談させていただくことになります。

2) 摘出術
 麻酔は小さいものであれば局所麻酔でも良いですが、大きいものだと全身麻酔の方が患者様には楽だと思います。切除する深さは、脂肪層や筋膜に達するまで、硬い組織を全て切除します。 3) 縫合法
 ケロイドや肥厚性瘢痕を摘出した後に、傷を縫合しなければなりませんが、最も大切なことは、見た目をきれいに縫うことではなく、ケロイドや肥厚性瘢痕が再発しないように縫うことです。ケロイドは、真皮から生じます。よって、真皮に過剰な力が加わらないように、真皮より深くにある筋膜などの組織をしっかり縫い寄せて創を十分盛り上げ、創縁が何もしなくてもくっついてしまうような状態にします。そして、真皮縫合と表面縫合を最小限に行う方法を行っています。多くの教科書には、表皮に力がかからないように真皮縫合で減張縫合をする、とかかれていますが、われわれは、表皮はもちろん真皮にも力がかからないように、真皮縫合は最小限に、それより深い部分の筋膜などのしっかりとした組織で減張縫合し、創面が盛り上がるように縫っています。

4) 放射線照射療法
 先にも記述しましたが、わたしたちの病院では、ケロイドの手術後に放射線を照射することがあります。この電子線照射や小線源治療は放射線治療の種類であり、ケロイドの原因である線維芽細胞の異常な働きを抑える目的で使用します。もちろん放射線であるため、発癌の可能性がないとは言えませんが、ケロイドに対する放射線治療の100年くらいの歴史の中で、発癌の因果関係がはっきりと証明された報告はありません。安全な方法を放射線科医と相談しながら治療します。また、あまりに大きいケロイドに対しては、手術をしないで放射線治療を行うこともあります。

5) 放射線照射の方法
 いわゆる癌をはじめとする悪性腫瘍の放射線治療では、40Gy以上の線量が用いられることが多いのですが、ケロイドや肥厚性瘢痕の術後では、病院によって違いはありますが、だいたい10Gyから20Gyくらいの線量が使用されます。通常の方法だと、手術後翌日や翌々日から開始して、2-4日くらいに分けて分割照射します。たとえば胸に対して20Gy照射するときはたいてい、手術翌日から1日5Gyずつ4日間照射します。1回の照射にかかる時間は、ほんの わずかで、手術のきずから5mm程度広い範囲に照射しています。
 

われわれの病院の、電子線照射機器と、照射中の様子。
照射自体は、痛みを伴わず、すぐ終ってしまいます。

6)手術の後療法について
 外科的治療および放射線治療で一度は完治したとしても、術後から局所の皮膚伸展を繰り返していれば、やはり再発することもあります。よってわたしたちは最低半年以上はきずの伸展を予防するためにテープ固定、また過度の運動、仕事をさけるようにお願いしています。


【具体的な治療について】
まず外来を受診していただくと、その状態に合った、様々な治療法をお勧めします。その中から、患者様と御相談して、治療方針を決めていきます。治療には保険適応がありますが、ケロイドの様な病的な状態ではなく、単なる傷跡であれば、保険が適応できない場合もあります。もし手術することになりましたら、だいたいの流れはこのような感じです。

1. 局所麻酔で手術するか、全身麻酔で手術するか決めます。小さいものでしたら局所麻酔で十分ですが、大きいものでしたら、全身麻酔が楽です。
2. 全身麻酔では、術前に麻酔科の受診をしていただき、麻酔科専門医のお話を聞いていただきます。
3. 放射線を照射することになりましたら、放射線科を受診していただき、放射線治療の専門の先生からお話を聞いていただきます。
4. 入院するか、外来通院されるかですが、放射線照射をされる方は、術後翌日から2-4日間毎日放射線を照射することになるので、それが終るまで入院される方も多いです。全身麻酔の場合には、入院をお勧めしています。退院の時期に関しては、必ずしも抜糸するまで入院される必要はなく、早い方は術後翌日、また放射線が終了するまで、抜糸が終るまで、とご希望に応じて、患者様と相談して決めましょう。
5. 抜糸は大体手術してから、7日-14日の間に行う場合が多いです。その後、サージカルテープなど術後治療が始まります。
6. 術後の患者様自身のケアがもっとも再発予防に重要です。


何かご不明な点があれば、いつでも外来にいらしてください。また遠方の方は【お問い合わせ】ページからメールにて御相談ください。システムの都合上、携帯の場合は返信できないことが多いため、PCのご使用をお勧めいたします。またメールアドレスの誤入力により返信できない場合が多くなっています。2-3日以内に返信がない場合はご自分のメールアドレスを再度ご確認の上、お問い合わせページよりご質問ください。(ケロイド外来担当医:小川令・赤石諭史・土肥輝之)