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専門外来のご案内

ケロイド・傷あと外来

新型コロナウイルスのワクチン接種をご検討されている
ケロイド体質の方へ

ケロイドは皮膚の炎症を契機に発症します。コロナウイルスのワクチンは筋肉注射であり、さらに細い針を使いますので、皮膚に炎症をおこすことはまずありません。よって安心してワクチン接種をお受け下さい。一方、ケロイドの原因として有名なBCGワクチンは皮膚で炎症を起こして免疫反応をおこすことを目的とするワクチンであり、BCG接種がケロイドの原因になるのはそのためです。

また、ケロイドを現在治療中で、副腎皮質ステロイドのテープ剤(エクラープラスターやドレニゾンテープ)、また軟膏やクリームを使用している方も、これらが体内に吸収される量はごくわずかですので、治療を続けなから新型コロナウイルスのワクチンの接種をしていただいても問題ございません。何かご不明な点がある場合は、いつでも当科ケロイド・傷あと外来をご受診ください。

ケロイド外来・傷あと外来について

ケロイド外来では、赤く盛り上がる「きずあと」である、ケロイドや肥厚性瘢痕を専門的に診察・治療しています。
ケロイドや肥厚性瘢痕は、赤く盛り上がって痒みや痛みを伴う、たいへん不愉快なものです。特に顔をはじめとして目立つ場所にできた場合など、ケロイドの苦しみや不安は本人にしかわからないものです。日本医科大学(日本医大)のケロイド外来はそのような患者さんの苦しみを少しでも減らすことを目的としてつくられました。
ケロイドの治療は、患者さんの体質、年齢、またケロイドのできた場所によって最適な治療法が異なるため、専門の知識が必要です。この外来では、患者さん個人個人にあった最適な治療法を提案させていただいております。ケロイドの患者さんはもちろん、ケロイドかどうか分からない方、またケロイドの予防にご興味のある方(ケロイド体質であることがわかっている上で、手術を受ける予定がある方)など、少しでも心配なことがありましたら、どなたでもお気軽に御相談ください。
東京は千駄木にある日本医大付属病院形成外科のケロイド外来には、毎年1年間で2000人弱のケロイドの新患患者さんが日本全国からおみえになりますが、年に1-2回しか来れない遠方の方や海外にお住まいの方でも無理なく治療を継続できるような治療プランを提案させていただいております。現在ではケロイドは完治できる疾患となりました。

ケロイドとは? - ケロイドの原因・リスクとは?

ケロイドは皮膚の深いところにある真皮という部分で炎症が続いてしまうことにより生じる疾患です。炎症ですから、痒みや痛みがあります。本来、きずを治すために必要な炎症が過剰に続いてしまうため、血管ができて赤く見え、膠原線維(コラーゲン)ができて盛り上がります。よって痛みや痒みだけでなく、見た目も気になる、大変不快な疾患です。
ケロイドは炎症ですから腫瘍ではありませんし、悪性腫瘍のように転移したり、命を脅かすものではありませんが、大変不快なものですので、精神的悪性疾患と考えてしっかりと治療することが大切です。
過剰に心配する必要はありませんが、治療開始が早ければ早いほど、早く治ります。今ではエクラー®プラスターを中心に、手術、放射線治療などを組み合わせることにより、ケロイドは十分に治せるようになりました。
患者さんがケロイドだと思っても、実は専門的には熱傷潰瘍・ケロイド・肥厚性瘢痕・成熟瘢痕・瘢痕拘縮といったものの可能性があり、それぞれ治療法が異なります。もちろん外来にお越しいただければ、それらの診断をつけることができると思います。
中でもケロイドは体質によるものが多く、ご家族で同じような症状の方がいらっしゃる場合も少なくありません。ケロイドは特に意識しないような小さなきず、たとえばにきびとかちょっとした毛嚢炎・毛包炎などからもでき、まるで何もない場所に突然できたようにも思えるものです。胸や肩、腕(BCGの注射跡)、お腹(特に帝王切開をされた方の下腹部)などによくできます。また、ピアスをあけた耳におおきなしこりができることもあります。帯状疱疹やクラゲに刺された傷からもできることがあります。
運動などでケロイドの部位が引っ張られる力(炎症が強くなります)、女性ホルモン、妊娠(妊娠後期で悪化し、授乳中は軽快します)、高血圧などが悪化するリスク因子として知られています。

耳のケロイド

耳のケロイド・・・ ピアスをあけた後に、感染をおこしたり、なかなか傷が治りにくかったりすると、このような腫瘤になる可能性が高まります。形成外科の技術を用いることで、ほぼ耳の形が変わらないように切除することが可能です。術後電子線を照射し、術後テープ固定を行います。多くの場合は局所麻酔による日帰り手術が可能です。

下腹部のケロイ

下腹部のケロイド・・・帝王切開や腹部の手術後に、1本の線だった傷跡が横に広がっていき、赤く大きく盛り上がることがあります。このようなケロイドも、大きくなってしまったものは手術と放射線治療が早く、また小さいものはエクラー®プラスターでも治療可能です。

ケロイドの治療

ケロイドは、できた部位や、いろいろな状態によって、最適な治療法が異なります。
以下に代表的な治療法を記載します。

1. 手術しない方法

1) 飲み薬

飲み薬ではトラニラスト(リザベン®)が有効であるとされています。これは抗アレルギー剤であり、ケロイドや肥厚性瘢痕の組織中にある各種炎症細胞が出す化学伝達物質を抑制することにより、痒みをはじめとする自覚症状を抑え、さらには病変自体を沈静化させると考えられているものです。また、柴苓湯(さいれいとう)という漢方薬も症状の軽減に効果があります。

2) 塗り薬

塗り薬として効果のあるものにはいくつかあります。炎症を抑える目的での、デルモベート®やアンテベート®、リンデロン®をはじめとするステロイド軟膏・クリームや、スタデルム®など非ステロイド系抗炎症剤、ヘパリン類似物質(ヒルドイドソフト®やビーソフテン®)の軟膏・クリーム・ローション・スプレーなどの保湿剤があります。その他、当科では痒みに対してヨモギローションを使用することもあります。

3) 安静・固定・圧迫

昔から、やけどのきずあとは、サポーターや包帯、胸帯、腹帯、ニーブレースなどで固定することが効果的とされてきました。ケロイドや肥厚性瘢痕は、絶えず力がかかる部位にできる傾向が強いので、きずを安静に保つ意味で重要です。さらに圧迫することで過剰な血流を抑制することができ、創部の炎症が改善します。

4) 貼り薬

最も多く利用されているものには、抗炎症剤であるステロイドのテープ(強い効果が得られるエクラー®プラスターや、弱い効果が得られるドレニゾン®テープ)と、シリコーンジェルでできたシート(Fシート ®、シカケア®、レディケア®、クリニセル®など)、またポリエチレンジェルシート(傷あとケアシート®)があります。ジェルシートは長期間貼っておくことで、保湿や創の安静・固定の意味があります。ジェルシート自体に粘着力があるため、傷跡やケロイドにぴったりくっつき、洗うことによって繰り返し使うことができます。さらに安価なサージカルテープや、かぶれにくいシリコーンテープ(メピタック®)なども有用です。

5) 注射

ステロイド(ケナコルト®など)を注射することがあります。赤みや盛り上がりは著明に減少します。塗り薬と同じく、ステロイドであるため、毛細血管の拡張を呈することもあり、周囲の皮膚の菲薄化が生じることもあるのが欠点です。硬い瘢痕の中に注射すると痛みがあり、女性ではステロイドの影響で生理不順が生じることもあるため専門の外来で慣れた医師の注射を受けるのがお勧めです。
当科では極力痛みが少ないように、麻酔の注射を組み合わせたり、細い針を使い、注射する場所や方向を常に考えながら、患者さんが痛みをあまり感じずに必要な時に無理なく注射を受けられる工夫しています。
アトピ―性皮膚炎の治療でも良く議論になりますが、ステロイドと聞くと拒否反応を起こされる患者さんがおられますが、適切な使い方をすることによって確実な効果が得られることがあります。ケロイドの場合は場所や大きさ、その他いろいろな条件によって、使った方が良い場合と使わない方が良い場合があります。われわれは、ステロイドの治療は数多い治療法の一つとして位置づけていますので、患者さんとよくご相談させていただいてから、必要なときのみに使用いたします。

6) レーザー

ケロイドや肥厚性瘢痕の治療に、レーザーを使うことがあります。ケロイドや肥厚性瘢痕の中の血管を破壊したり、コラーゲンの分解を促進させることを目的としたものが主流です。
当院のケロイド外来では、色素レーザー(Dyeレーザー)や Nd:YAGレーザーなどいくつかの種類のレーザーを設置しておりますので、部分的に試して、効果がある場合には継続してレーザーを照射することができます。さらに炎症のとれた傷あとにはフラクショナルレーザーを施行することができます。ただし健康保険を適用しての治療は現時点ではできません。

7) その他

そのほか液体窒素を使った治療法など、種々の治療法が報告されてきましたが、単独で効果のあるものは少ないのが現状です。
日本医大のケロイド外来担当医はケロイドに対する新しい治療法の開発のため、ケロイドに関連する遺伝子やタンパク質、また代謝物質などをターゲットに、診療と共に昼夜を問わず日々研究を行っております。また瘢痕・ケロイド治療研究会を通じて日本におけるケロイド治療を発展させるための活動を行っています。

2. 手術する方法

1) 手術に対する考え方

ケロイドは、いままで解説してきた方法だけで軽快するようであれば、手術をしなくても良いのですが、しかし、ひきつれ(瘢痕拘縮)の原因になったり、目立つ所で醜状が問題となれば、やはり手術をすべきです。
しかし、従来からこれらは安易に手術してはならないとされてきました。なぜならば、楕円形に切り取ってそれを縫い縮めると、少し長めの直線のきずとなりますが、もしそこからケロイドや肥厚性瘢痕が再発したら、前より大きなものになってしまうからです。今でもそのような考えの医師は多いのですが、形成外科では、できる限り再発しないような縫い方の工夫をし、さらに放射線治療である、電子線治療や小線源治療という方法を取り入れることによって、これらの問題を解決してきました。

完全に傷跡をなくすことは困難ですが、エクラー®プラスター、手術、放射線治療など様々な治療を組み合わせることによって、平らにして赤さがとることができます。
ケロイドは大きくなればなるほど治療が難しくなります。治療開始が早ければ早いほど、早く治ります。外来にて拝見して、今の患者さんにあった治療法をご提案させていただきます。

2) 摘出術

麻酔は小さいものであれば局所麻酔でも良いですが、大きいものだと全身麻酔の方が患者さんには楽だと思います。切除する深さは、脂肪層や筋膜に達するまで、硬い組織を全て切除します。

3) 縫合法

ケロイドや肥厚性瘢痕を摘出した後に、傷を縫合しなければなりませんが、最も大切なことは、ケロイドや肥厚性瘢痕が再発しないように縫うことです。
ケロイドは、真皮から生じます。よって、ケロイドが発生する真皮に過剰な力が加わらないように、真皮より深くにある筋膜などの組織をしっかり縫い寄せて、創縁が何もしなくてもくっついてしまうような状態にします。そして、真皮縫合と表面縫合を最小限に行う方法を行っています。
多くの教科書には、表皮に力がかからないように真皮縫合で減張縫合をする、とかかれていますが、われわれは、表皮はもちろん真皮にも力がかからないように、真皮縫合は最小限に、それより深い部分の筋膜などのしっかりとした組織で減張縫合し、創面が盛り上がるように縫っています。

4) 放射線治療

先にも記述しましたが、わたしたちの病院では、ケロイドの手術後に放射線を照射することがあります。この電子線照射や小線源治療は放射線治療の種類であり、ケロイドの原因であると考えられる血管新生を抑制する目的で使用します。もちろん放射線であるため、統計学的に発癌の可能性がないとは言えませんが、ケロイドに対する放射線治療の100年くらいの歴史の中で、発癌の因果関係がはっきりと証明された報告はありません。安全な方法を放射線治療の専門医と相談しながら治療します。また、あまりに大きいケロイドに対しては、手術をしないで放射線治療を行うこともあります。

5) 放射線照射の方法

いわゆる癌をはじめとする悪性腫瘍の放射線治療では、40Gy以上の線量が用いられることが多いのですが、ケロイドや肥厚性瘢痕の術後では、病院によって違いはありますが、だいたい10Gyから20Gyくらいの線量が使用されます。通常の方法だと、手術後翌日や翌々日から開始して、2-4日くらいに分けて分割照射します。たとえば胸に対して20Gy照射するときはたいてい、手術翌日から1日5Gyずつ4日間照射します。1回の照射にそれほどの時間はかかりませんが、手術のきずから5mm程度広い範囲に照射しています。

ケロイド用の装置
ケロイド用の装置

われわれの病院の電子線照射機器と、照射中の様子。照射自体は、痛みを伴いません。

6)手術の後療法について

外科的治療および放射線治療で一度は完治したとしても、術後から局所の皮膚伸展を繰り返していれば、やはり再発することもあります。よってわたしたちは最低半年以上はきずの伸展を予防するためにシリコーンテープ固定、また過度の運動、仕事をさけるようにお願いしています。

具体的な治療について

まず外来を受診していただくと、その状態に合った、様々な治療法をお勧めします。その中から、患者さんと御相談して、治療方針を決めていきます。治療には保険適応がありますが、ケロイドの様な病的な状態ではなく、単なる傷跡であれば、保険が適応できない場合もあります。もし手術することになりましたら、だいたいの流れはこのような感じです。

  • 1. 局所麻酔で手術するか、全身麻酔で手術するか決めます。小さいものでしたら局所麻酔で十分ですが、大きいものでしたら、全身麻酔が楽です。
  • 2. 全身麻酔では、術前に麻酔科の受診をしていただき、麻酔科専門医のお話を聞いていただきます。
  • 3. 放射線を照射することになりましたら、放射線治療科を受診していただき、放射線治療の専門の先生からお話を聞いていただきます。
  • 4. 入院するか、外来通院されるかですが、放射線照射をされる方は、術後翌日から2-4日間毎日放射線を照射することになるので、それが終るまで入院される方も多いです。全身麻酔の場合には、入院をお勧めしています。退院の時期に関しては、必ずしも抜糸するまで入院される必要はなく、早い方は術後翌日、また放射線が終了するまで、抜糸が終るまで、とご希望に応じて、患者さんと相談して決めましょう。
  • 5. 抜糸は大体手術してから、7日-14日の間に行う場合が多いです。その後、シリコーンテープなど術後治療が始まります
  • 6. 術後の患者さん自身の意識とケアがもっとも再発予防に重要です。

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